グッドマン・インタビュー

その55 (1999年4月)

鎌田雄一


 堀切信志 (ts, bs)

1957年1月18日、富山県富山市、生まれ。
某工業大学、ジャズ科、卒……?
グッドマンには'96年12月より時岡秀雄(ts, bs)とのデュオで毎月出演。今月、初めて、ソロで演ります。

大学、行かずに、何やってたの?
 昼はサックスの練習とアルバイトで、夜はジャズ喫茶で酒をのんでいました。

それが「ルートマイナスアール(√-R)」なの?どんな店でしたっけ?
 レコードは軽いものから重いものまで、なんでもありで、月に一回ぐらい、フリー系のライヴをやる店でした。ボトルが入っていれば、氷代のみで、ずーっと居れる店でした。(営業11:00〜26:00)

昔は、どこのジャズ喫茶も昼からやってたんだよね。ライヴは、どんな人達がやったの?ブッキングは、誰が、やってたんですか?
 出演したのは、近藤等則(tp) 土取利行(perc) 金井英人(b) 池田芳夫(b) 梅津和時(as) など。阿部薫がスッポカシたことがあった時、後日、店の常連客で、他の店のライヴに、おしかけて大さわぎしたこともありました。その時、自分は客席にいた。
 ブッキングはママさんが、やってました。
 自分達も出演していました。

'70年代、後半ですよね。印象に残ってるライヴありますか?
 「√-R」でのライヴの記憶は、ほとんど消えました。サックスの人の話になりますが、池田グループの清水末寿(ts)は、いい感じだったと思います。
 他できいたライヴでは、ペーターブロッツマンとハンベニンクのデュオ。ふたりともサックスを吹きますが、本当に体から出てる音(体が鳴っている音)のように感じ、お手本にしたい、なんて思いました。

自分達のライヴの編成は?
 時岡さんのサックスと皆川修さんのドラムと私の3人グループと、もうひとつ、伊藤さんのドラムとのデュオです。

最初からフリー指向だったの?
 ジャズの聞き始めが、J・マクリーン、M・デイビス、J・コルトレーン、D・エリントン、D・ブルーベック、A・ブレイキー、R・ルイス、O・コールマン、C・コリア、A・ブラクストンのサークルなど、スイング系からフリー系まで異和感なく聞けていたので、演奏も多指向で始まったようです。
 大学のジャズ研では、スタンダードとモード系。
 ライヴではフリー系。

グッドマンがライヴを始めたのが'76年頃だったんだけど、自分は'73年に名古屋から出て来て、もう今時フリージャズなんて、やってる人はいないと思っていたのに、けっこうたくさんいたので驚いたよ。もうジャズ喫茶ではフュージョン全盛の感があったから……。でも、しばらくして'80年代に入ったら、やっぱりフリーやってた人も、色々、変わっていきましたよね。堀切さんの'80年代は、どんな風でした?
 '70年代後半から'80年代前半までフリーを演って、その後、10年以上、フリーの演奏は休んでいました。今から思うと、自分にとって出したくない音が集積していってお休み、ということになったようです。今は、それを一度クリアして、出したい音が集積して来ています。今後の演奏は自分でも、楽しみです。

その否定から肯定への転換のキッカケみたいなものは、あるんですか?
 若い頃の、クソまじめ、からクソが取れた事と、原田グループでの時岡さんを聞いて、たのしそうだったので、自分も、まず、たのしんでやろうと……。

グッドマンで長くやっている、しばてつさん(ピアノ、ピアニカ)とは、いつ頃からの知り合いなの?
 25才ぐらいから4〜5年、日吉の慶応大学のジャズ研で、練習していました。その時に、ひとりだけ変わり者がいて、スタンダードの中でフリー系の演奏をしていたのが彼で、何回か部室で、セッションをしました。

しばてつさんも今は、現代音楽的発想というか、即興やフリーを含めたコンポジションとしての音楽を追求してるみたいですが、堀切さんにとっては、ジャズ研でのジャズのフォーマットにのっとった音楽と、今グッドマンでやっているフリーな音楽との関係はどうなっているのでしょうか?
 自分は、サックスのサウンド中心にしか考えていないので、ジャズもフリーも、自分にとっては同じです。
 演奏をする時は、まず音楽的イメージを作ってから、やるのでは、なく、サックスのサウンドに自分が共鳴し、展開させてゆく事にしています。

サックスが好きなんですねぇ。それでサックス修理の仕事ともスムーズに、つながっているんですか?
 そうです。楽器それぞれが能力をフルに出せるように調整するのが仕事の上での生きがいです。自宅で修理屋をやってますので、サックスをやってる人、一度、調整(ひびき、音程、など修理じゃない部分)に来てみて下さい。

そんなに、サックスが好きだったら、時岡さんと同じように、サックスアンサンブルとか考えているんですか?ワールドサクソフォンカルテットとか、ROVAサックスカルテットとか、20人位のサックスだけのフランクフルトサクソフォンオーケストラとかについては、どう思いますか?
 今の時点では、サックスを吹く事しか考えていないので、グループや音楽全体の事は、わかりません。
 ワールドサクソフォンは黒人の、なまり。
 ROVAは技術。
 ドイツの20人は聞いてません。という様な感想です。20人のバンドの中には、初心者の人も参加しているそうですが、そういう人の演奏の良さ、というものも、もちろんあると思うし、一回だけ一緒にやるのも楽しいと思うのですが、持続して一緒にやっていくのは、キツイものがありますね。

じゃあ最後に、時岡さんからの質問で「世界遺産って何だと思います?こういう発想って?奈良の大仏が世界遺産でしょうか?
 発想はいいと思う、が、その決め方が問題なのかな?この質問には、私は答えきれないので、もしよければ次の人に回したいと思いま〜す。


 堀切さんちは、中野サンプラザの北。中野駅から7〜8分のマンション5階でした。修理や調整に出したい方は、くわしく教えますので、グッドマンまで問い合わせて下さい。
 インタビューの前に少し時間があったので「まんだらけ」によってジョージ秋山の「捨てがたき人々」と、少女マンガの「きららの木」を探したんだけど、なかった。ざっと見ただけだったので、見落としたのかもしれないけど、今まで、どこの新本屋でも古本屋でも見かけないんです。誰か持ってる人、いたら貸してくれないかな。
 次回は、もと「東京暮色」、今は「サックス兄弟」と「花びらブラザース」の市村智さんの予定です。

グッドマンインタビュー
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