グッドマン・インタビュー

その66 (2000年3月)

鎌田雄一


坪井裕文 (as, ss)

1958年2月28日、姫路市に生まれ、育つ。
大阪工業大学、応用化学科、中退。
グッドマンには'88年9月より、祝部靖eb とのデュオで開始。'95年9月より、ソロになり、毎月出演。

サクソフォンを始めたキッカケは?
 学生の時にジャズ研に入って、本当はトランペットをやりたかったのですが、ペットは上手い人がいるからサックスをやれ、と言われて、やりはじめた。
 その後、ステップスのレコードを聞いて、初めてマイケル・ブレッカーという人を知って、それから、サックスもおもしろそうだ、と聞きはじめた。
(奥さんの注: かれは、サックスをやる前には、ギター、その前は剣道をやっていたんです。)

東京には、いつ、何故、出て来たの?
 大学の頃は、ただ好きで吹いていたので、少しもいい音が出なくて、友人や先輩たちから、お前の音はなんとかならないのか?と、いつも言われていて、音だけでもなんとかしたいと思って、23才の時に、武蔵野音楽学院のプロ養成科(今は、もう、ない。)に入学した。基礎から習いたいと思っていたので、クラシックの佐々木雄二先生に習っていた。最初は、2年間、クラシックを習って、その後は、ジャズの先生に習うつもりでいたのだが、少しも上手にならず、だらだらと7年目でやっと卒業できた。
(奥さん注: 彼は、なぜか自分流のジャズに、こだわって、6年間も、卒業試験のジャズの先生方に落とされまくって、学んでいるんです。がんこ、だよね。)

クラシックを習ってた人が、フリーな演奏をするようになったのは、なぜ?
 ジャズを吹きたくて、武蔵野でジャズ理論とかも勉強していたのですが、入学して、1年目に、佐々木先生の帰国2回目のリサイタルがあって、あまり聞きたくなかったのですが、つきあいで聞きに行った。その時、生まれて始めて、サックスのクラシック音楽を聞いて、目から、うろこが飛び出る様な感動を覚え、こんな音楽もあるのか、と思いました。どう考えても、これは、サックスの為の音楽というか、サックスでしか出せない音、サックスの世界だ、と思った。……そのリサイタルの後で、先生に楽譜を見せてもらって、その中にアドリブと書いてある所があって、非常に興味を持った。
 ジャズとは何ぞや、と今でも考えているが、自分にとっては、やっぱり「サックスの為の音楽」という事がいつも気になっているので……今のところ、フリーなのか何なのか、自分でも、よくわからない……?
(奥さん注: 彼は、先生の折り紙つきで音がきれいだし、ジャズだから、もっとどぎつい音楽を求めてやってもいいんだけど、クラシックのマウスピースで、そんなフレーズを吹いても、良くいえばソフト、悪くいえば迫力に欠ける。また、そこが、クラシック畑の私には、いいんだけど、他のジャズ畑の人には、どうきこえているのか、わからない。)<注の注: 奥さんもサックス奏者です>

坪井さんの演奏は、自作の曲の、音列というものにこだわって、アドリブを展開しているように、きこえるのですが、先に音列を決めてから曲を作るのか?曲が先に出来てから、音列が決まるのか?どちらですか?
 今まで、何曲、作ったか、わからないが、割合でいくと3割ぐらいが、音列が先で、7割は、曲の雰囲気ですか、ただのフレーズだけで、やっています。
 最初の頃は、ベースの祝部(ホウリ)さんが作った曲と半分半分でした。
(奥さん注: 彼の音楽は、本人は違うと言いはるんだけど、クラシックとジャズを融合させたいのでは、ないかと思う。たった9小節ぐらいの自作メロディーラインを、アドリブで静かに、そして、何かのそくばくからの逃飛行(ママ)のように演奏していく。)

グッドマンでは、ここ4年半ほど、ずっとソロですが、ソロという形式に、こだわりでも、あるのですか?サックスのソロというのは特殊だと思うのですが、共演者とか、欲しくありませんか?
 祝部さんとは、学院の卒業試験で、手伝ってもらうことになって初めて、知り合いになりました。彼は私の作った曲にも、すぐに反応して、音が返ってきました。
 今は、ソロでやっていますが、特にソロに、こだわっているわけでは、ないです。ソロはソロでいい所があり、デュオはデュオでいい所がある気がします。今年は出来れば、いろんな人と演れれば、やってみたいです。
 サックスのソロは、それほど特殊だとは、思いませんがやっぱり音が大事だと思っています。
(奥さんの注: 彼は、異常に個を大切にする。それは私にも言えてる面だけど、私のように、人へのここちよさを求めていない。それは、彼の音楽の欠点でもあるけど、自由性でも、ある。)

では、最後に、西田さんからの質問で、「プレイをして、自分の作品には、やはり性格というものが反映すると思うのですが、それが気になるほうですか?失礼なのですが、坪井さんのことを、すごくせんさい、というか、心やさしい方、と思ったのですが、それがバレバレになることを、どう思いますか?それとも、実は、とても荒々しい人なのでしょうか?
 自分の性格を、あまり真険に考えた事は、ないのですが、あまり音楽に反映することは、ないと思います。自分で気がつかないだけかもしれませんが……。自分は、特にせんさいでは、ないと思うし、逆にかなり大ざっぱで、いいかげんな性格だとおもっています。……その性格がバレバレになっても、その音楽が、その人の音楽だから、それは、それで、おもしろいと思う。
 やっぱり、やりたい事をやれば、おのづと、その人の性格が出て来るような気は、します。
(奥さんの注: 彼は魚座で、細かくて、やさしいけどね、本心というか、潜在意識で、自分主義の冷たさも、ないとは、言えませんね。……荒々しい部分を演奏に出そうとして、いつもからぶりしてるような感じかな?彼自身、性格をまる出しにしても、おかまいなしで、演奏している、その"今"を楽しんで、快感に感じながら吹いているんじゃないかな?それだけでは、いけないように思うんですが……そう思って、年に一回、秋の府中市の市民発表会には、彼も一緒に出演しています。私が企画するステージなので、スタンダードやクラシックを演奏します。聴く人達の為の演奏を考えるいい機会になっているんじゃないかな?サービス精神だけでもダメだけど。)


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