グッドマン・インタビュー

その80 (2001年5月)

鎌田雄一


 臼井康浩 (g)

1969年2月2日、和歌山に生まれ、育つ。
琉球大学 法文学部 社会学科 心理学専攻、卒。
グッドマンには、'99年10月より、小川圭一asのバンドに参加し、2000年5月より、鈴木茂流ebとのデュオで、毎月、出演中。

今日は、いきなり、前回インタビューした吉田さんからの質問で「ギターという楽器に、こだわりは、ありますか?ギターを弾くという行為を目的と、とらえているか、手段としてしてとらえているか……どうなんでしょう?」
 ギターは、あくまで手段として考えております。たまたま長い間やっている楽器がギターなので、必然的に表現しやすい手段となっているのでしょう。実は、これまでに、コンガ、ウクレレ、マンドリン、ハーモニカ、ベース、にもチャレンジしたのですが、長続きしなかったので、やはりギターが自分には合っているのだと思います。
 ギターを弾くこと自体も好きなので、ギターが目的になっていることもあります。しかし、決っして連習するのが好きというのではありませんので、誤解しないで下さい。

ギターを手段とした、その目的は?
 んー、いきなりむつかしい質問ですね。最終的な目的は自己表現ということになるのですが、他人とコミュニケーションする手段が今のところ、ギターが一番やりやすいのです。これまでに色んな方々と知り合いになりましたが、ギターを通じてでなければ知り合うことが出来なかった人がほとんどだと思います。自分が、もっとしゃべるのが上手で、他人とのコミュニケーションがもっとスムーズに出来ているなら今までギターを弾いていなかったかもしれません。

今のデュオの前に、共演していた小川さんとは、やはりニュージャズシンジケートがらみですか?
 そうです。5年位前だったと思います。その頃は色んな所に顔を出していました。庄田次郎さん(tp)のニュージャズシンジケートのセッションや、神戸の「ビッグアップル」で行われている内橋和久さん(g)のニューミュージックアクションとか、はたまた廣木光一さん(g)の合宿に参加してみたりも、していましたし、現在住んでいる名古屋では「KUKU」という店でのフリーセッション等、自分が演奏できると思われるものには、極力、参加しておりました。その頃に知り合った人からは、ものすごく影響を受けていると思います。いろんな表現方法を吸収したい、という時期だった、と思います。

名古屋にも、グッドマンみたいな、即興演奏をやってる店が、あるそうですね?
 名古屋は即興演奏は、けっこう活発に、やってますね。「KUKU」を中心に「TOKUZO」や、一宮市ですが「プレゼンチ」という店で即興演奏、やっています。3年前からは春の今池祭りというイベントが始まり、路上で一日中到るところで即興演奏が行われるという強烈なのが、あります。普段はアンダーグラウンドでやっているものが一般の、お客さんの前で行われる貴重なイベントです。このイベントは、あくまで今池という街の商店街の方々が自主的に企画しているもので、助成金とか、なしでやっているのです。賛否を浴びつつも、定着しつつあり、その内容のむちゃくちゃさの噂を聞きつけて、全国各地から色んな人々が参加するようになってきました。
 名古屋は、大都市的な面と、ローカル的な面とがバランスよく混在している、と私は感じています。なので、誰かが何か面白いことを企画したり、盛り上げようとすると、それに共感する人が一丸となって、盛り上がります。街の規模が、ほどよい大きさなので、あまりはっきりしたジャンル分けとか、集団の区別がなく、それぞれが、いい交流の仕方をしていると思います。私は名古屋が居心地よく活動できる場所として非常に気に入っております。たまたま住むようになったのですが、名古屋に居なければ、今の自分は、なかったであろうと思います。特に「KUKU」の存在は、私だけでは、なく、名古屋の即興演奏シーンには欠かすことの出来ない場所であります。

いいなぁ、交流したいですね。……今池は、30年前、自分が名古屋に住んでた頃「イーストグッドマン」という店で、初めて演奏を開始した所なので、なつかしいです。tbとflとbと自分のas、全員パーカッションでアートアンサンブルシカゴと初期のウェザーリポートを合体したような事を、やってました…………。「KUKU」について、もう少し、くわしく教えて下さい。
 「KUKU」は名古屋の中心街である栄(さかえ)という所にありまして、普段は呑み屋なのです。マスターの村上等さんは画家でもあり、ドラマーでもあり、の芸術家でありました、日曜日には、店を色んな人に提供してくれて、ライヴをしております。お店は10数年前に開店して、これまでにペーターブロッツマン(sax)井上敬三(sax)豊住芳三郎(ds)林栄一(as)、他多数のミュージシャンも演奏しております。しかし、「KUKU」の魅力は、マスターの村上さんの懐の広さに、あり、どんな演奏内容であろうと、まずは、その演奏の機会を気楽に与えてくれるところであると思います。色々な方々が実験的なチャレンジをしたり、模索途中のものの発表の場でもあったりするので「KUKU」から生まれてきたバンドや音楽が、これまでに数多くあると思います。私も、即興演奏に初めて触れたのは「KUKU」の即興フリーセッションでの村上等さんとのDUOでした。「KUKU」のスペース自体が非常にフリーな雰囲気なのでなぜか「KUKU」で演奏すると面白くなるというマジックがあります。「KUKU」では色んな人と知り合いまして、現在ちょくちょく共演させてもらっている松本健一さん(ts)も「KUKU」でのセッションで知り合ったのでした。非常に面白い店なので名古屋におこしの際は、ぜひ寄ってみて下さい。
 尚、今年の今池祭りは4/29(日)30(月)に、地下鉄、今池駅近郊の路上で行われます。これを見れば、名古屋の即興シーンが、どういうものか、わかりますので、ぜひ、おこし下さい。

今池祭りは、面白そう、今年は、グッドマンに自分のプレイズマイルスのバンドのライヴを組んじゃったので行けないけど、来年は早めスケジュールをきいて行きたいなぁ。
 わかりました。来年は日程が決まりしだい報告いたしますので、ぜひ来てください。……毎年参加しておりますが、世の中には色んな人がいるんだなぁ〜と、つくづく思います。……グッドマンに出演されている人も、まだまだ知らない方々が沢山いるので、この先も随分、楽しみが多いです。

色んな人とコミュニケーションしてきて、その中でも、今デュオを組んでる鈴木さんと、一番、ウマが合うんですか?
 茂流さんとは、これまで一番、共演回数が多いです。エレキベースを使っているのですが、あまりベーシックなことを弾かないので、束縛感が、なく、自分のやりたい事が出来るので、自然と共演回数が増えたのだと思います。あと、楽器を何本も持っていて、毎回違うベースで演奏するので、いつも新鮮な気持ちで、いれるというのも、あります。年上なのですが、ラフに付き合ってくれるので非常に有難く思っております。

即興、フリーミュージック、と言っても、実に千差万別。一回だけのセッションなら、どんな人とやっても楽しいですが、レギュラーメンバーとして続けるとなると、自分なんか、すごく限定された人としか出来ないんですよ。その辺り、どう考えていますか?
 私も同じ、ですね。自分が何をどう表現したいのかはっきりしていなかった頃は、とにかく色んな人とセッションして、自分に出来ることを模索していましたが、多少なりとも自分の表現手段が理解できてくると、誰とでも、という訳には、いかなくなってきたように思います。やはり、何らかの共通な面がないと、レギュラーメンバーとして長く続けるのは難しい、と思います。これからは、いろんな人とセッションをしていきながら、そこで得た新しいものをレギュラーバンドの中で生かしてゆくという方向になってゆくのだと思います。
 名古屋に住んでいるので、これまで同様に、東京に面白そうな人がいれば東京に来ればいいし、関西にも、すぐに行けるし、名古屋に来てもらって共演するのもいいし、立地条件を生かして、いろいろ活動したいと思っております。今回あまりふれられなかった「プレゼンチ」や今池の「TOKUZO」も面白い店ですので、また機会があったら、詳しく紹介したいです。


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