グッドマン・インタビュー

その88 (2002年1月)

鎌田雄一


清水 浩 (g、シャナイ)

1964年8月、福島に生まれ、育つ。
多摩美術大学、油彩科、卒。
グッドマンには'01年2月より、市村智ts,gとデュオで1ヶ月おきに出演。1月は、12日(土)にサックス兄弟のゲストで参加予定。



絵は、今も描いているの?
 描いています。'92年から5年間ぐらいは、主に売るための絵(花の絵)を描いていましたが、やはり、自分の好きな絵を描きたくなって、3年前ぐらいから再び制作しています。死ぬまで描いてゆこうと考えています。……音を出すのと同じぐらい好きで、20年間、絵をとるのか?音楽をとるのか?と悩み続けて来ましたが、30才をすぎて、同じだ、と考える様になれたのです。音楽は、空間と時間、というカンヴァスに好きな様に、その時その時の自分のインスピレーションにしたがって、色を置いてゆく事と同じです。

市村さんとグッドマンでやるようになる前は、どんな活動をしてたの?
 '85年から10年間は、プログレッシブ・ロックのバンドをいくつかやって来ましたが、'96年に福島で、何人かの即興をやりたいという仲間たちと「みちのく・インプロヴィゼーション・カンパニー」を結成して、それ以降は、即興演奏を中心に活動する様になりました。……1年半ぐらい前に、EXIAS-Jの近藤秀秋さん(g)とインターネットで知り合いまして、そこのサックスの谷川輝明さんの紹介で、グッドマンを知りました。

福島にも即興の仲間がいるんだ。何人ぐらい、いてどんな所で演奏するの?
 15人ぐらいが入れ替わり、出たり入ったりして楽しかったです。福島には、ほとんど演奏する場所が無かったのですが、時々、フェスティバルみないなものがあれば、出してもらったりしました。昔、ニュージャズシンジケートに参加していた郡山の稲葉さんも元気にソプラノサックスを吹いています。
 ……でも、結局、去年('00年)ぐらいに分裂というか枝わかれ、というか、その中で完全な即興で演りたいという僕を含めた3人が「シャトルコック・ミュージック」を新たに結成し、今はそのトリオで2ヶ月に1回、福島の白河市の「T&T」という店に出演しています。いずれグッドマンにも出演する予定です。

その過程でCD製作も、はじめたんですか?
 僕は元々、フリーインプロ系の熱烈なリスナーで、'80年代(20才代)の頃は、血まなこになって都内のレコード屋を探しまわりましたよ。大久保の「ヴィンテージマイン」や高田馬場の今は、なき「レコードギャラリー」や、渋谷「ジャロ」その他、一日中、あちこち探し回る日々でした。スティーブレイシーやデレクベイリー、その他のヨーロッパ系が主なターゲットでした。今、ホームページでコレクションリストを作製中です。
 ……結局、自分が演奏する立場になり、どうせなら色々な人に聴いてもらいたいなぁ、ということで、うまくいったテイクなどをCDとして残そうと思ったのです。CDといってもCDRですので一枚一枚やいて、ジャケットもコンビニのコピー機でカラーコピーしたり、ラベルも手作業で自分たちで作ってゆく手段を選びました。とにかく安く作れて、安く提供できるのです。I.C.P.のハンベニンクさん(ds)なんかも、ジャケットは一枚一枚手描きで、しかも来日の際にダンボール箱に50枚ぐらい、そのアルバムを入れて、天売りしたそうですね。草の根的で面白い。
 僕らのレーベルは「ラベル・アオネコ」といいまして、'00年3月にスタートして、現在まで14枚のCDRをリリースしています。だいたい、月に1枚弱のペースで発表しています。それらをホームページで紹介して、低価格で買ってもらって聴いてもらいたいと思ったんです。……少しでも人様の耳に届いて、「おもしろかったよ。」とか「つまらなかったね。」とか感想/反応が欲しいんです。今後は、インディーズものを置いてくれるレコード店などに置いてもらおうとも考えています。

フリージャズや即興演奏も創世期の頃は、記録という意味でも、アジテーション的な意味でも、レコードは貴重だったと思うのですが、フリージャズも即興演奏も、ある程度やれば、マンネリ化してくるし、ましてやベイリーやレイシーを聴いた世代が、それにあこがれて、即興演奏したものをCDにして出すのは、今の時代、どうなんでしょうね?……特に、即興演奏の場合、ライヴなら、今、その現在、その場所での演奏ということで、すごく意味があるし、面白いと思うんですが、それをCD作品として残すことに意味は、あるんでしょうか?
 デレクやレイシーへのあこがれは強大にあったと思いますが、即興演奏をする場合、まさに、その時、その場所での気分のおもむくままに空間に向けて音を放出してゆく行為、これは、やはり、僕自身の演奏に他ならない、と思います。その「永遠の一瞬」は、その場に居合わせた人達にしか共有できないものが多いと思います。……ですから、僕はCDは又、別な物としてとらえ、制作しています。「記録された小さな丸い板」ですが、それで、現場に居合わせない人達、未知の人々に、少しでも、その音の一部でも伝える事ができたら……と思っての事です。
 即興演奏とは、何か特別な人達だけのものでは、なく、誰にでも自由にかかわることが出来うる音楽だと思いますし、実際、僕がグッドマンで対バンの人の演奏を聴いて、様々な行為者がいて、ステキだなぁと思った訳で、それぞれが面白いのです。それらのレポートの一部として、CDを発表して、ホームページで紹介すれば、少しづつ色々な新たな人達が加わってきたりして、ますます広がってゆくんじゃないかなって希望からのものです。即興演奏の地図を広げてゆきたいんです。それが僕にとっては意味であり、夢であるのかもしれません。だから、何人かの人には、直接、声もかけたし、沢山のプレイヤーにCD制作に参加してもらいたいのです。
 60分以内の出したいと思う音源を、カセットテープかMDにして、僕の所に送ってもらえれば、CDは出来ます。ジャケットや、ラベルのデザインに関しても、各アーチストの希望に出来る限り、そえる様にしています。音源を送ってくれる際に、ジャケットの原画や、その他の指定をしてもらえればそれに従ってつくりますし、おまかせ、ということでしたら、こちらで考えて製作します。それで合計、一枚500円で作れます。希望の枚数も、「10枚希望」とか言ってもらえれば、500円×10の5000円で作ります。あとは、アーチストそれぞれが、ご自身のライヴ会場で売るなど、しれもらうということで……。
 基本的に僕らの条件としては、レーベル名(アオネコ)を入れさせてもらうことと、ホームページで紹介(宣伝)を、させてもらうことです。もちろんホームページ上で売れた物に関しては、売上はお送りします。皆さん、とりあえず気軽に連絡してみて下さい。


希望者がいっぱい来たら、ただ働きなのに大変なことになっちゃうんじゃないの。……では、ラストに前回のインタビューの望月さんからの質問で「その、みなぎる精力の源は何から来ているのでしょうか?
 そういう望月さんこそ、あふれんばかりの精力ですね。素晴らしい。僕は、ただ絵と音が好きっていう、それだけなんです。
 ……と、いう訳で、1月12日より3週間、グッドマンでトイレ個展を開催します。トイレに入る方は、私の作品が展示されておりますので観て下さい、2〜3回、作品を入れ替える予定です。
 今年も、ますます、市村-清水デュオとして頑張ってゆきたく思います。ホームページも、ぜひ見て下さいね。


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