グッドマン・インタビュー

その90 (2002年3月)

鎌田雄一


仲野麻紀 (as)

1977年10月13日(リーコニッツと同じ、だそうです)名古屋に生まれ、育つ。
某S女子短大、卒。
グッドマンには、'01年2月より毎月出演。今月が、ラストライブ。

女性でサックスというと、ブラスバンドですか?
 高校が名古屋市立工芸高校というところで、ジャズのビッグバンド部があったのです。

エーッ!そこは、私の母校です。あなたは後輩ですね。私の在学中は、ジャズのジャの字もなくて、35年前、ジャズのレコードコンサートをやったり、広報紙にジャズの紹介記事を書いたり、啓蒙活動をしたんです。ひょっとしてその成果が、あったのかなぁ。
 もともとジャズが好きだったの?
 好き、嫌い、というより、中学までモダンバレエを習っていたので、創作バレエなので、音楽にジャズなんかも、よく作うんです。それに、父親が「スターアイズ」というジャズクラブに、よく行ってて、その話を、きいたりしてました。
 なぜか、小学生の頃から、将来、サックスプレイヤーになる予感が、あったのです。

サックスを吹くために生まれてきたようなもんですね。高校を出てからは、どんな活動をしてたの?
 高校時代は、とにかく「ラヴリー」「サテンドール」などライブハウスに行きまくってまして、そうすると、自分も、もっと吹きたい衝動にかられますよね。大学へ行くようになってからは、社会人BigBandに入ったり、JazzBarでバイトしたり、の生活です。
 東京に来てからは、林栄一さんに習いたくて、林さんがグッドマンで、ソロのライブをやった時、押しつけがましくお願いしました。その後、松風さんに半年、教えてもらい、多田さん、池田さん、クラシックの富岡さん、等に、単発でレッスンを受けました。

そんなに沢山、いろんな人にレッスンしてもらうということは、疑問点が、いっぱいあるってことなの?
 自分の出すサックスの音には、疑問が、いっぱいです。

……で、ある程度、解決できたの?
 技術的な謎や、ジャズでいうアプローチは解決しました。そして、もともと演奏を聴いて、感銘を受けた人に教えてもらったので、各プレイヤーの音の魅力を再確認することが、出来たのです。……ただ、自分の音が、それほどの魅力を持てるところまでは、ナカナカ……。

バンドを自分で作ったり、バンドにはいったりは、しなかったの?
 林さんには、とにかくバンドをやれ、と言われてましたが、しばらくは、バンドで音楽を作るという発想がわかなくて、ひとり籠もっていました。……しかし、東工大ジャズ研で、嗜好が合う人達と出会い、バンドを始めました。
 今やっているバンドのひとつに、6人編成のがあって、ゆくゆくは人数を増やすことを前提としてやっています。去年、藤井郷子さんのオーケストラにトラで出演した時、その音の厚さに心奪われ、魅力を感じました。その前から構想は練っていたのですが、ついに火がついた、という感じですね。フロント3管(tp, tb, as)の音の調整とか、p, dsは、ずば抜けてセンスが良いので曲のどこに配置するか、とか、今はオリジナルを書くのが楽しい作業になっています。

それは楽しみですね。どんどんライヴをやって下さい。……とは言っても4月から、又、フランスに行くんですよね。去年の11月に行ってきたのはどんなイキサツで?
 これもサックスと同じなんですよ。……もう幼少の頃から、頭の中に、フランスにいる自分が浮かんでいて……それを実行しただけなんです。
 今回は特にタイミングが良かったのか、良き出会いが多々ありました。例えば、フランス在住の沖至さんやアランシルヴァー、サニーマレーなど、他にもフランスでバンドを組む予定のメンバーなど。……ニューヨークで生活をした事がないので、わかりませんが、ヨーロッパは今、とても興味深く感じます。勿論、音楽状況は日本と、あまり変わらないかもしれませんが、私の求める音の一部は、ヨーロッパの空気も含んでいる気がします。

アランシルヴァーやサニーマレーは、あなたの上の上の世代、そうとうのおじいちゃんでしょう。元気でした?
 とても、とても。アランシルヴァーの元気さは、本当にヤンチャな少年って感じだし、サニーマレーのドラムもよく唄ってるし、バクハツしてました。オーディエンスに対しての態度も、すごく見習うべきものがありました。それにひとことで言うなら、やさしい。それは歳のせいだけではないでしょうが……。
 ヨーロッパの現在の音楽事情、ヨーロッパ独特のジャズプレイヤー、ヨーロッパで活躍する日本人プレイヤーの事など、もっと知って欲しいので、日本に向けて情報を提供できれば、と考えています。……特に沖さんは、日本ではほとんど、その活躍が知られてませんが、フランスだけでなく北欧ツアー、ドイツなど精力的に活動しています。

渡仏の費用、生活費などは、親が出してくれるの?
 いやはや……父親は反対しているのです。自分で貯めたお金で行きます。学生ビザで行くので、9月のコンセルバトワール入学までは語学学校に申請するのです。コンセルバトワールは、日本では考えられないほど低価格な授業料なんです。

音楽活動もしながら、まだまだ勉強もするんだ。えらいねぇ。……仲野さんはグッドマンではベースとデュオで始めて、すぐソロになって、サックスソロで一年近くやってきたわけですが、どうですか、やってみて。
 ベースの人とは、おこがましいですがゲイリーピーコックとヤンガルバレクを二人ともイメージしていました。
 ソロでやるようになって、楽曲の聞き方も変わりましたし、スタンダードを演る時のイントロにも重点を置くようになりましたね。一年間やって、特に感じた事は、武満徹の言葉では、ありませんが、沈黙の存在する音を出せればな、という事です。
 さっき言った6人編成のバンドでは、自分のオリジナルとオーネットコールマンの曲を演っています。オーネットの曲ではハーモロディクス理論で頭を悩ます事、多々あります。人間6人が同時に唄うとなれば、そりゃ複雑になりますよね。今は色々な方向からアプローチし、アレンジし、試しています。このバンドでは、デモテープを作ってフランスに持っていきたいので、力が入っています。
 オーネットもいいのですが、ジョニーホッジスの唄いっぷりも好きなんですよね、プログレロックにも入りたいし。欲は深いですワ。


今回、せんどうさん、森順治さん、ふたりにインタビュー断られ、ムリヤリ仲野さんにお願いしました。せんどうさん、森さん、いつかバカッ話でいいから、やりましょうよ。ネ。


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