グッドマン・インタビュー

その91 (2002年4月)

鎌田雄一


海道雄高 (ベース)

1970年3月3日、東京、西荻窪に生まれ、世田谷で育つ。
武蔵野美術大学、造形学部、建築学科、卒。
グッドマンには、'99年9月より、鎌田雄一as,tsのプレイズ・マイルス・カルテットに参加。
さらに2000年11月より、ソロも開始。
4月は、渋谷毅p、鎌田雄一ss,asとのトリオも、あります。

ベーシストになったイキサツは?
 大学に入る少し前からジャズに興味を持ちはじめ、入学してすぐ、軽い気持ちでジャズ研に入りました。小さい頃からクラシックピアノを習っていたので、ジャズピアノをやることも考えましたが、せっかくだから、他の楽器もやってみたい、ということで、なんとなくウッドベースを始めたんだと思います。見た目とか存在感という意味でもベースに魅力を感じていたところは、あったかもしれません。……で、よくあることですが、学校の授業よりもジャズ研の方がメインになってしまい、そのまま、ベーシストになってしまった、という感じです。

その頃のジャズ研では、どんな曲をやってたの?聞いた話では、いっときヒュージョン全盛になった時期も、あるらしいけど。
 ボクが入学したのは'92年で、すでにフュージョンブームは過ぎていました。当時のはやりとは違うかもしれませんが、OB世代はハードバップ、当時の4年生は新伝承派のジャズとECM系が、はやってました。でもジャズ研では、1年生がやるべきカリキュラムが一応あって、はじめは、ビバップと超スタンダード曲などを、練習してました。

自分が好きだったジャンルは、特に無くて、抵抗なくビバップとか演ってたの?
 はじめ、よく聴いていたのは、ビルエバンス、キースジャレット等でしたが、ジャズ研に入ってからは、モダンジャズといえるものは何でも聴くようになりました。バンドも沢山かけもちしていましたが、それぞれに面白い部分があるので、それを楽しんで演ってました。同時に、吉祥寺のジャズ喫茶「Meg」で、バイトをしていたので様々なジャズのジャンルに触れる機会には恵まれていた、と思います。

嫌いなジャズは、ないの?
 好き、嫌いは、もちろんあると思います。好きなジャンルを特定するということは、対極にあるものを否定しないといけない気がするのですが、否定したはずのものの中にも好きな部分があったりして、一概に嫌いだ、と断定できないのです。それだと好き嫌いを主張できないじゃないか、と言われそうですが、今の自分は、そんな感じなのです。

しつこくて申し訳ないのですが、嫌いな部分というのを、きいてみたいのです。
 演奏に関して言えば、嫌いなタイプの共演者は、自分の感性が、せばめられるように感じる人、共演していて、自由になれない人、です。そう考えると、リスナーとしても、やはり聴いていて窮屈に感じる音楽は嫌いですね。

今、グッドマンでは、ベースソロ(時々デュオ)と、私のプレイズマイルスバンドですが、他では、いくつレギュラーでやってるんですか?宣伝を兼ねてバンド紹介と、演奏している店も教えて下さい。


レギュラー活動の半分が、マイルス、カーク、トリスターノの、それぞれトリビュート的バンドですが、何か考えるところ、感ずることは、ありますか?ちなみに、私事で恐縮ですが、自分が曲をやるバンドは、両方ともオリジナルなしのマイルスとカークです。というのは、自分の音楽的ルーツはフリージャズ、目指す所は完全即興演奏なので、オリジナル曲を自らの固定した世界観で作ることに抵抗があるのです。しかし即興ばかりやっていると自家中毒におちいってしまう。その解毒作業として、やっているので本当はトリビュートでも、ましてや、お勉強なのでは、さらさらないのです。海道さんは?
 私は自分のバンドを持っていませんが、今後やるとしたら、オリジナルと完全即興の、どちらか、又は両方をやりたいと思っています。その中で、マイルス、カーク、トリスターノ、がやってきた手法、アイデア、は参考にするつもりです。できれば、彼らの精神性も取り入れたいですが、曲をやっているだけでは、なかなかむずかしいです。
 トリビュート的バンドに限らず、バンドのメンバーのプレイから考えさせられることが多いです。この人は、何故、どのような精神状態で、そのような音を出したのか、知ろうとすると自分のことも見えてくる気がします。

ソロでは一時、エフェクターやサンプラーを多用してましたが、今は、アコースティックで、けっこう弾きまくってますね。今後の展望など、あったら……。
 人前で演奏するということは、死ぬほど恥ずかしい!と感じたことが、過去、数回あって、ひとつは、ジャズ研に入って初めてアドリブをまじえて演奏した時、次は、初めてプロのミュージシャンに混ざってライブハウスでやった時、次は、初めてストリートライブを演った時でした。今では、それらのことも楽しんでやってます。恥ずかしい事は、実は気持ちいいことなのでは、ないか、と思いはじめた時、永福町のギャラリーで、ソロで演奏する機会がありました。これは「死ぬほど恥ずかしい・その4」になるにちがいない、と思い、自分の許せる範囲で、とことん恥ずかしいことをやろう、といってもサンプラーを使っただけですが、自分のフレーズをその場でサンプリングしてループさせることにしました。アドリブで弾いた自分のフレーズがループされるわけですから恥ずかしいです。でも、その日の演奏が、かなり良かった気がして、反響も良かったので定期的にソロをやりたい、と思い、グッドマンでやることにしました。サンプラーだけでなく、エフェクター等を使うことで、予期しない音がでてしまったりして、それに反応するかたちで、当初は演っていました。
 今は、次の「恥ずかしいこと」を探しているところです。自分で詞を書いて弾き語り、というのも、そのうちやってみたいですね。
 民族楽器の人とも演りたいですし、楽器以外の、舞踏、映像、ペインティング、朗読、等とも共演したいです。


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