グッドマン・インタビュー

その (2003年2月)

鎌田雄一


モリシゲヤスムネ (cello)

1963年12月23日、大阪に生まれ、高校卒業まで山口県徳山市で育つ。
静岡大学、農学部、卒。
グッドマンには、'99年11月より、しばてつp,pnc、細田茂美g とのトリオで2ヶ月おきに出演。

農学部だからというわけでもないのですが、前回インタビューの西山さんからの質問が面白いので、これからいきます。「モリシゲさんにとって、食べる、ことと、演奏する、こととの間に、共通するものがあるとしたら、それは、どんなことでしょうか?」
 楽しい、ということでしょうか。楽しくないときついですね。

楽しくない食事、楽しくない演奏って、どんなの?
 ふだん、なにげなく食事をしています。楽しいか、楽しくないか、などとは、ほとんど考えないですよね。よほど、その食事がまずければ、やはり楽しくないでしょうけど。
 食事をするということは、食べもの(異物)を体の中に入れるということですが、よく考えると、不思議なことです。……その不思議さを感じられれば、もっと楽しくなるのかも、しれません。
 音を出す、ということは、それだけで楽しいですね。即興演奏の場合、その時、その場所で、おこる、ということ。他でもなく、このようにしか、おこらない、ということの不思議さを楽しむということ、のような気がします。
 楽しい、楽しくない、は自分自身の問題なんですけど、即興の場合、何かにつかまっていた手をはなして、自由になる、そこで、おこっていることに身をまかせる、という快感が、あると思うんですが、それがあると楽しいですね。……逆に、いつまでも、うしろを向いて、自分の引き出しの中をさがしながら、次にどうしようか、こうしようか、とやっている時は、あまり楽しくない演奏をしているかもしれません。

チェロとの出会いと、即興との出会いは、同時期なんですか?
 チェロを弾く前は、ギターを弾いていました。ギターを弾いて歌をうたう、ということを20才代は、やっていましたね。……今から12年くらい前ですがグッドマンにも、ひきがたり、として、数回、出演したことがあります。自分で曲と詞を作って演奏するということを続けているうちに、曲を連習して再現するということに、だんだん、あきてきて、即興に興味を持ちはじめました。
 そして30才をすぎて、即興演奏をやろうと決めて、ギターをやめ、チェロをやることにしました。チェロを選んだ理由は、フレットがないこと、持続音が、出せるということ、音色と、楽器の単純さ、とそのルックスですね。

即興の仲間は、すぐ見つかりました?
 ぼく自身、あまり積極的に外に出て、はたらきかけるタイプでは、ないので、時間がかかりましたね。そのころ、詩人の石内矢己さんのさそいで、詩の朗読と一緒に、演奏をグッドマンでやらせてもらったのと、舞踏家のイムレ・トールマン(Imre Thormann)さんと知り合い、舞踏との即興をやりはじめてから、少しずつ、他の人と知り合う機会が増えていきました。

詩と舞踏では、一緒にやるにあたって、違いはありますか?
 詩と舞踏と、での違いは、あまりないような気がしますが、お互いに即興でやるのか、それとも、詩なり、舞踏なりが、あらかじめ出来上がっていたり、ふりつけがしてあったりするのか、そちらの方が違いがあると思います。

トールマンさんと知り合うキッカケは?
 当時、即興に興味を持ちはじめた頃、チェロをやるようになる前に、ギターを普通に弾かないで、たたいたり、ひっかいたり、あと、ピアノをやったり、パーカッションを使ったりして、模索している時期がありました。その頃に、他の舞踏家と即興をやった時に、彼が見に来ていて、そこで知り合いました。

それで、しばてつトリオでも、チェロを、たたいたり、床の上でグルグル回したりするんですね。このトリオでは、いつも録音してるけど、CDを作ったりは、してるの?

 しばさんが、彼のレーベル(いなもでーそ)で2枚出しています。
 それとは別に、ぼく自身が個人的に、自分で気に入った演奏を編集してCDにして販売しています。手づくりのCD-Rなので、ライヴの時に手売りです。あと、注文をいただければ、送ることも出来ます。070-5546-2135まで、どうぞ。

2月は、グッドマンで、しばてつトリオのライヴがありますが、それ以外に決まっているのがあれば、どうぞ宣伝して下さい。
 3月の3日(月)、4日(火)に麻布の die pratze で、イムレトールマンとヒグチケイコ(voice)の三人でやります。これは、1月4日から3月26日まで行なわれる、ダンスフェスティバルのうちの2日間で、他の日には笠井叡、上杉貢代、山田せつ子、大森政秀、小林嵯峨、など18組、出演。
 あと、まだ決まっては、いませんが、これから、いろんな人と共演していきたいと思っています。
 最後に、さっきCDの話の時、言いそびれたのですが、いばトリオ以外に、ピアノでのソロ、コントラバスの猿山修さんとのデュオ、クラリネットの今西徳之さんとのデュオ、を個人レーベルで作っていますので、よろしかったら、きいてみて下さい。

毎年2月号には、去年私が見た映画ベストテンと称して、面白かった映画を発表してきたのですが、去年は、ある映画を見たために、面白さの基準がアップ。それ以降、見る映画の評価が下がってしまった。ウーン。その映画とは、デビットリンチのマルホランドドライヴ。いつもは順位をつけなかったのですが、今回は、まさしくベストワン。ヒッチコックのサイコと並んで、生涯のベストワンと言ってもいいでしょう。……というわけで2位から6位までは欠番。7位、ガウディアフタヌーン(スーザンシーデルマン)8位、魚と寝る女(キムキドク)9位、キャストアウェイ(ロバートゼメキス)10位、青い山脈(西河秀幸)11位から19位までは順不同です。いちげんさん(森本功) ドラキュリア(パトリックルシエ) アモーレスペロス(アレハンドロゴンザレス) ジャスティス(ノーマンジェイソン) 耳に残るは君の歌声(サリーポッター) さぶ、殺し屋1(共に三池崇史) 恋ごころ(ジャックリヴェット) 地獄の黙示録・特別完全版(フランシスコッポラ)。ちなみに、ワーストスリーは、シティオブエンジェル、リリィシュシュのすべて、ネイムレス、です。ファンの人、いたら、ゴメンナサイ。

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