グッドマン・インタビュー

その106 (2003年7月)

鎌田雄一


富田秀康 (g)

1968年1月12日、長崎県に生まれ、育つ。
佐世保工業高校、建築科、卒。
グッドマンには、去年の7月より市村智(ts,g)とのデュオで1ヶ月おきに出演。今年の8月からは、清水浩(g)とのデュオで1ヶ月おきに出演する予 定。ちなみに7月は、29日(火)中村秀則12弦gソロの日にゲストで出演します。

 ギターがいっぱいあるけど、やっぱりギター少 年だったの?
 中学くらいから、ハードロックを弾いてました。……すごい田舎だったのです、近くに楽器やっている人がいなくて、独学でコピーなどしてました。……だい たい学校では寝てて家に帰ってくると6〜8時間は練習してましたね。でも、その頃、練習してた事は、今は、まったく、おぼえてません。

東京には、いつ出てきたの?
 高校卒業して、すぐです。
 今は、なくなったらしいですが、武蔵野音楽学院ってとこのジャズギター科に行くためです。2年の予定が3ヶ月でやめてしまいました。……その頃、音楽は 何でも(クラシック、現代音楽、民族音楽)、ロックはもちろん好きだったんですが、ジャズだけは好きになれなかった。それなのに興味本位で選んだ結果、 まったくおもしろくなかったのが原因です。……その頃習った事も、ほとんど憶えてません。

自分が何をやりたいのか、みつかったの?
 当時は、何もないまま、ただ、やめました。……本をいろいろ読んだりしてました。
 数年後に、なりゆきで、パフォーマンスの音楽などをやりはじめたのですが……まぁ、その後、作曲するためにジャズ理論を習ったりして……ギターを使って 実践していくわけですが、だんだん高度な技術が必要になってきて、別に自分はジャズギタリストになりたいわけでもないし、だいたい知りたいと思っていた事 は、わかってきたので、それも途中でやめて……自分がやりたい事っていうのが、みつかったのは、比較的最近ではないかと思います。

なりゆきって、何かキッカケがあったの?
 当時、アルバイトしてた所に、武井よしみち、というパフォーマーがいて。……まぁ、そこには、いろいろやる人達が出入りしてたのですが、大駱駝鑑からパ フォーマーに移行して、その後、メルツバウのメンバーになった坂井原さんとか、そこら辺の人が、さそってくれたのが、きっかけです。

パフォーマンスの音楽というのは、どんな風にして作っていくの?
 武井さんのパフォーマンスでの音作りに関しては、私がその時やってる音楽とのコラボレーションという形では、なくて、武井さんのコンセプトに対し、それ に合う方法を、そのつど考えだしていました。
 例えば、最初は、多重録音でノイズを作ったり、バイオリンを弾いたりしたのですが、それは、そのパフォーマンスのために選択したことで、自分が以前から やってた事では、ありません。
 自分が選択した方法を、イメージに近づけていくのは、そうとう大変でした。何しろ初めてやる方法なので……。ある目的、例えば、シアターΧ(カイ)の フェスティバルでの公演を目的にしているのであれば、それに向かって、大学や、小さいホールなど、何ヶ所かで、練習を兼ねて公演するのですが、ひとつの目 的が終わると、次に移行する時には、また新しいものを作るのです。……そこに、自分の技術やボキャブラリーなどが追いつかなくなってきて、カナダに公演に 行った時は、サンプラーなどを使ってやったのですが、そこが自分の限界でした。
 今、ギターで即興演奏をやっているのは、パフォーマンスの時にやっていた自分の方法に対する反動だと思います。

即興をやるようになって、かなり開放されました?
坂井原さんとは、どんな編成で、どんな場所でやってたの?
市村さんとは、どこで知り合ったの?
 いつまで即興をやるかは、わかりませんが、今は、即興をやってて、幸せです。
 坂井原さんとは、オーストラリア人の Bass、アメリカ人の Voice & パフォーマンス、坂井原さんのドラムに私のギターでスタートしました。即興というよりは、ノイズよりのバンドだったと思います。パフォーマーや、他の ミュージシャンが出たり入ったり安定しないバンドで、新宿や渋谷のクラブで演奏してました。
 市村さんとは、山岡さんというドラマーが「三日月」という彼のバンドのメンバーを募集してて、私は JazzLife の募集記事を見て、市村さんは、山岡さんとは、以前からの知り合いだった……。そこで、トリオでやったのが市村さんとの出会いです。20000V で1回、ビンスパークで2回やって終わりました。

そして、その後でも、市村さんとは続いたんですね?
 私にとって、市村さんは師匠のようなものです。たぶん最初に即興でデュオをやったのが、彼でなかったら、また他の即興以外の形態に走ったかも知れませ ん。……グッドマンでは6回ライヴをやりましたが、結果は、どうあれ、毎回クリエイティブにやれたと思います。最初の頃は、やはり、自分が、どう演奏する か、ということが重要だったのですが、その結果、無意識的にでも、ばくぜんとしたネタみたいなものを使って、やってたように思います。もちろんそれは、ど ういうエフェクターを使うか、とか、ある種のコード進行らしきものを、どこかに入れてみたいとか、そんな風なことだったのですが、でも、その結果、自分と しては、けっこう満足できても、デュオとしては、どうだろうって感じが、しました。……ある時期から、自分が、どう演奏するか、という事が、けっこう、ど うでもいい事に思えてきたのです。その結果、相手の音が、よく聞こえるようになってきました。市村さんと演奏する時は、今は、できるだけ空っぽになった状 態で、彼の音に、自分の音を導き出してもらう、みたいな感じでやっています。……彼の方は、最初から、そういうやり方でやっていたようなので、よく、こち らがわかるまで一緒にやってくれたなぁと感謝しているのです。
 もちろん即興の場合、演奏する相手や、場所によってその空っぽの比率は変えるべきだし、そのみきわめのバランスは大事だと思います。

市村さんが6月でグッドマンの全ての活動を休止してしまうのは残念ですね。
しかし、8月からは清水さんとのデュオが始まりますから、抱負とか、あったら、 どうぞ。
 市村さんとは、これからも場所を変えて、新たな気分で続けていきたいと思います。彼もグッドマンは、けっこう長くやったし、グッドマンは、広さとか客の 反応とか、即興には、すごくむいているので、逆に温室みたいになってしまう危険もあるし、店の制約(大きい音が出せない、とか)もあるから、他でも、どん どんやって、またやりたくなったら、やればいいんです。
 清水さんとのデュオは、とても楽しみにしているのですが、今は何も考えないようにしています。回を重ねてできるだけ予想のつかない所に、たどりつきたい です。

では、ラストに前回の金井さんからの質問で「一番気持ちのいい瞬間は、どんな時 ですか?」
 猫と、あそんでいる時。

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