グッドマン・インタビュー

その (2003年12月)

鎌田雄一


久保康晴 (メトロノーム、エフェクター、ドラム)

1966年8月30日、福岡県に生まれ、育つ。
福岡大学、経済学部経済学科、卒。
グッドマンには、今年の5月より、毎月出演。ドラムは使わず、メトロノームとエフェクターのみの演奏です。

 現在、カノウプスというドラム製造、販売の会社で働いているそうですが、何か、つてがあったの?
 まったく、何のつてもありません。……まず、大学を4年で、すんなり卒業できないと思ってました。単位や何やもメチャクチャだったし……。ウチの大学は「右」だったんですかね。昭和天皇の崩御で恩赦があり、卒業できてしまったんです。
 さあ、どうしようと、まぁ東京でも行ってみるか、で来て、今の会社も何となく入って、今に至るんです。……けど、良かったです。色んなジャンルの色んなミュージシャンと知り合えたし、ラッキーでした。……天職とは、いいませんが。

自分は、今まで、どんなジャンルで音楽活動してきたの?
 まあ、ドラムをたたくキッカケは、中学3年生の時のレッドツェッペリンやディープパープル、なんですが、高校ではブラスバンドに所属してたこともあっ て、大学のクラシックのオーケストラでティンパニーをやることに始まり、R&Bのバンドで九州代表になったり、ピアニストとデュオでフリーやった り、ジャズのビックバンドで九州ツアーしたり、アイドル系や、ローカルのCMのレコーディングに参加したり……。たまに実家に帰ると、そのCMが、いまだ に流れてたりするのが、やはり福岡は田舎だな、と……。

それだけ、色々やって、自分のアイデンティティというかルーツは、これだ、というのは何ですか?
 もうこれはズバリ '69〜'75 あたりのエレクトリックマイルスです。どんなのをやってても、今だに頭の中に浮かぶのはコレです。高校3年生あたりで聴いてしまって、そりゃ当時は、理解 なんて出来るわけは、ないし、今だに未知な部分ばかりです。……自分にとっては、トラウマに近いかも。深いですね。……ロックバンドでドンパンやってて も、メトロノームをいじってても、何か音像的にとでもいうのかな? あそこに支配されちゃってる気がします。

グッドマンでは、メトロノームをたくさん使って、ポリリズム、ポリテンポのミニマルミュージックといった感じですが、ドラムおたたかないで、ソロライヴをやってみようと思った発想は、どこから?
 ソロやるんだったら、ドラムやらなんやら「たたく」のは止そうと、何となく決めてたんですよね。理由は自分でも、わかりません。……電子メトロノームっ て意外と言うこときいてくれないんです。使ってるエフェクターもそうだし、始まっちゃうともう止められないってのを一度経験したかったのがあります。まぁ ボタン押せば止まるんですけど、微調整しながら、ゆっくり時間が経過するってのをやりたかったんです。30分間でワングルーヴって感じですかね。……ドラ ムとかたたいちゃう方が、それはラクかもしれませんが、悪い友達が多いんで、すぐ楽器持って乱入する奴もいるし……ひとりで、ダレも入って来れない感じっ てのを演出してみようかなと……。

なるほど。……
悪い友達の中には、一緒にバンドをやってる人もいるの?
 はい、まず、日置寿士(g) と堀池(vo) のベースレス・トリオ・ロックバンド「タケル」をやってます。全員同世代で、ありとあらゆる音楽形態を笑いとばす面白いバンドです。不定期ですが、スターパインズカフェ、青い部屋、JIROKICHI、などで、やってます。
 もうひとつは、三国(g) とフリーゾーンダイナミックオーディオというインプロ・ロックバンドをやってます。いろいろあってメンバーは確定してないんですが、彼とは、二人だけでも 演奏していきたいな、と思っています。これも不定期でアチラコチラ、国立の地球座とかでやってます。
 9月、10月と、この二つのバンド、アチコチでやり散らかしましてね。……あっと、そうです。「タケル」は12/8(月)に高円寺JIROKICHIで すね。是非観に来て下さい。確実に、ニヤリとさせます。マイルスだ、ミニマルだ、とエラそうなこと言ってる私が、どんな演奏をしてるかも興味深いと思いま す。
 フリーゾーンは、三国君のジャンクギター(失礼)とボイスのテンションに、どこまでロックドラムで対抗できるかが勝負のバンドです。彼の発するサウンド にビートをつけて、時には、こっちが先導して、とか、体力勝負の部分もあったりして、楽しくやってます。最近は、彼が即興で出しちゃう「言葉」が面白くて しようがないです。
 彼らをはじめ、たくさんの魅力的な、いい演奏家と知り合いになれて、一緒に演奏できるのは、私、幸せなんだなー。

エレクトリックマイルスの音像は、トラウマすぎてなかなか自分では、そういうサウンド、コンセプトのバンドはできませんか?
 出来ません。無理です。
 鎌田さんも含め、いろいろチャレンジされてる方々も多いですけど、私では才能的に不可能です。自分でもいろいろ形態は違えどチャレンジしては、みたのですが、あの音像というか、コンセプトというか、サウンドですね。難しいです。
 もう5年前になるのかな、明大前のキッドアイラックホールで自分主催のイベントをやったんです。日置&木下の「S.D.」市村君(g,ts)の 「東京暮色」、樋口さんのパフォーマンス、そして自分は、もう一人ドラム入れてツインドラムと森順治さんと奥住君のツーサックスの4人で、と、テンコ盛り でした。
 その時の演奏は、自分なりに、トラウマを気にしない、いい演奏だったと思います。……また、イベントを含めて、やりたい気持ちはホントあるんですけど、もうトシですかね、気力が……。

そんなこと言わないで、やって下さいよ。
オレがやってるプレイズマイルスカルテットは、偶然、今、'70年のエレクトリック時代にさしかかってるんですが、思い入れは、さほどないのです。'54年のウォーキンから '91年までのレコードの曲を全曲演奏することだけが目的なのでね。
……最後に、前回インタビューのShhhさんからの質問で「久保さんが、グッドマンでの今の音楽を、アコースティックなカタチでやるとしたら、どんな楽器で何人編成で、やりますか?」
 大変な事を、きかれちゃったな。アハハハハ。30分ノンストップで、おんなじカッティングをずーっと続けさせても文句を言わないギタリストを一人、弦が 一本しかないベースを一人、カウベル一個だけのパーカッショニスト一人、左手しか使わないピアニスト、そして私の、やっぱりメトロノーム、一個、の5人編 成でしょうか。
 あ、これ、本当にやりたくなってきました。

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