グッドマン・インタビュー

その105 (2003年6月)

鎌田雄一


金井玲子 (cl, as)

1971年10月13日、長野県飯田市に生まれ、育つ。
杏林大学医学部付属看護専門学校、卒。
グッドマンには、去年の12月より、山下政一g とデュオで1ヶ月おきに出演。

 クラリネットとアルトサックスは、どちらが先 なの?
 中学校の時に、吹奏楽部に入って、cl を始めました。
 私は、もともと、ものごころついた頃からピアノを習っていたので中学に入ったら音楽の部活動をしたいと思っていました。小学校の時の担任の先生が音楽の 先生だったので、相談したら、「やっぱり、女の子はクラリネットかな。」と言われたので決めました。中学の時は、ゆうれい部員だったのですが、高校に入っ て、何の部活動をやるか選択する時に、自分は絵にかいたような運動オンチだったので、やっぱり音楽をやろうと思いました。吹奏楽部と軽音楽部があったので すが、あみだで選んで吹奏楽部に入って、高校3年間の清秋時代を音楽についやしました。
 そして、高校を卒業して東京に出て来て、看護学校に入ってからは、音楽から、はなれていたのですが、きっと、どこかで、音楽をやりたいと思っていたんで しょうね。資格試験の勉強をしている時、気分転換に見ていた広報紙に「PMS ジャズオーケストラのコンサートに来ませんか? バンドに入りたい人、大歓迎」みたいな広告がのっていて、コンサートに行きました。その時、初めて、ビッグバンドジャズというジャンルの音楽に、ふれるこ とになりました。そのバンドは、とてもアットホームな雰囲気のバンドで、楽しそうに、みんな笑いながら演奏していました。それを見てこの人たちの仲間にな りたい!! って思ったんです。そこで、そくバンドに入れて下さい、とお願いしたら、cl より sax の方がいいと言われて、アルトサックスをやることになりました。19才か20才の頃です。

それまで聞いたことのなかったジャズをやってみて、とまどうことは、なかったで すか?
 それはそれは、とまどいました。バンドに入ったのをきっかけに、ジャズを聴くようになったのですが、すごくかっこいいのに、どのように演奏したら、かっ こよく演奏できるかさっぱりわからなくて……。最初の5年間位は、ただ音を出して、なんとなく吹いていました。
 そうこうしているうちに、バンドでリードサックスを担当していたおじさんが病気で一時、抜けることになってしまって、サックスセクションのリードパート をやらさせるようになったんです。それをきっかけに、ジャズのアーティキュレーションとか、表現方法について、メンバーの中でめんどうみのいい人が、公園 での個人練習に、つき合ってくれたりして、やっと時々、自分の吹きたいように吹けるようになってきました。

そして見つけたのが、クレズマーミュージック?
 はい。梅津さんのベツニナンモクレズマーをライヴで聴いたのが初めてだったのですが、すごい衝撃でした。エネルギーが、がんがん伝わってきて、終わった 後は、ぐったり疲れてしまったのですが、これだ!! と思いました。そのあと、あまりに心に響いたので、一人じめするのは、もったいないと思って、衣山さん(tb)もライヴにさそいました。そしたら、彼女も 気にいってくれたようで、オーケストラ仲間の山下さん(g, b)に声をかけ、「なんちゃってクレズマー」を結成しました。
 肌に合うというか、血が騒ぐ、たましいが反応するんです。なんでだろう、音づかいですかね? くわしいことは、わからないのですが、その辺は、山下さんが解説してくれるかも……。
 今年の1月にグッドマンの昼の部に1回出演したのですが、又、夏にライヴをやろうと思っています。皆さんぜひ遊びに来て下さい。

そんなに山下さんは、色々、解説してくれるんだ。グッドマンでは、あまりしゃべ らないから知らなかった。
 去年の6月頃、「なんちゃってクレズマー」のリハーサルを始めた頃は、私、アドリブが出来なかったんです。ビッグバンドでも譜面を吹くので精一杯、アド リブは他の人におまかせしてた。コードトーンもフレーズも、ぜんぜん未知の私に、チャーリーパーカーのアドリブコピー譜を買ってきてくれて、これを練習し なさい、と宿題を出されました。(山下さんは高校教師ですから。) 体で払ってくれれば、お金は、いらないから……。と。(いい演奏をすれば、もとはとれるということです。) そうやって、数ヶ月やっているうちに何となくアドリブが出来るようになってきました。……この前も、練習している時に、もっとフレーズをつなげると、アー トペッパーみたいでかっこいいよ、と、次の練習の時に参考資料みたいに CD を借してくれました。

なるほど、ほんとに先生と生徒みたいだね。
それじゃあ、即興演奏でデュオをやるのもタイヘンじゃないですか?
 即興演奏を一緒にやってみない? って誘われて、実際に音を出す前は、何をすればいいんだろうって、さっぱりわからなくて、出来ないよ〜。と思っていました。でも何回かやってるうにち、反 応しあう、表現することが少しづつ面白くなって来た気がします。まだまだ奥深いものがあるはずですが……。熱くなる瞬間が時々あって……。面白いですね。 即興演奏は、ジャズのアドリブとは全然、別ものみたい。

実は、先週の日曜日、グッドマンの夜の部のライヴですごく不快な音楽をきいてし まったのです。それは、フォルムのない、いわゆるフリーとか即興とかいうものだったのですが、きいていて、フリーだから何をやってもいいだろう、まぁこん なものかなぁ、という怠惰なひらきなおりがあふれていて、その理想のあまりの低さにイヤーな気分になりました。……本当に自分にとって必要な音を切実に出 しているのか、無駄な音はないのか、問いただしたくなったのです。
 自分は、ちがう意見なのですが、昔、高柳さんというギタリストが、フリーをや る人は、ジャズの全歴史を習得した上でやるべきだ、と言ってました。どう思いますか?
 えーと、そんなことを言われてしまったら、私なんて一生、フリーはできないな〜〜。楽しければ、気持ち良ければ、いいなと思って、やっているんですけれ ど……。聴いている人にとって、面白いものなんだろうかという疑問は、いつもあります。(マスター、ごめんなさい。)
 はじめたころは、何も見えなくて、手さぐりだったんですけれど、最近は、自分の思いや、考えを表現できたらいいなと思ってやっています。

では、最後に前回インタビューした衣山さんからの質問で「1) sax と cl、どちらかしか、やっちゃダメと言われたら、どちらをとりますか? 2) 中央線で好きな駅は? 嫌いな駅は?」
1) Sax やりたい!! 本当に手ごわくて、あつかいにくくて、いつも、もてあましているけど、もっともっといろいろなことが出来る可能性を秘めているので、むずかしいけど、おも しろい。楽器と仲良くなりたい。
2) 好きな駅 おぎくぼ
 嫌いな駅 たかだのばば
(両方とも、ひらがなで書いてある所がミソです。)

グッドマンインタビュー
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