グッドマン・インタビュー

その (2003年3月)

鎌田雄一


小野正(fl, ts)

1969年12月26日、東京都八王子市に生まれ、育つ。
東洋大学,哲学科、卒。
グッドマンには、'02年7月よりEMYU(fl 笛)とデュオで1ヶ月おきに出演。

フルートとサックスは,どっちが先なの?
  小学一年生の頃,地元八王子の,お囃し連に入り,中学三年生ぐらいから笛を吹き始めました.これは犬田囃子といって,神田囃子を受けついだものです.高校時代にクラリネットを始めました.姉がやっていたので自分もやりたくなったのです.テナーサックスは高校三年の時,コルトレーンをきいて転向.最初はビックバンドで吹いてましたが,大学2年の途中でやめ,友人のつてで法政大学のジャズ研に出入りするようになりました.フルートは,その頃,手に入れて,でも本格的に吹き出したのは,24〜5才くらいからですかね…….だから,fl,tsよりも,しの笛が一番,経験年数,長いんです.

コルトレーンは'67年に死んでるから,全然同時代じゃないよね.
 全く,です.まわりは,みんなカシオペアかスクエアーのファンでしたから.ハハハ…….

大学を出てからの活動は?
 大学時代,法政大学の友人たちとは,オーネットやミンガス,モンクの曲を,まぁ,出来もしないのに,やっておりました.まぁ,そんなこんなしてるうちにバンドでも,フリーなアプローチが多くなってきて,インプロ(即興)とかやるようになってきました.「大きな古時計」をモチーフにして,大音量インプロをやるとか,平井堅なんかより10年も前のことです.ウフフフフ.……で,そのバンドもベーシストと二人きりになって……どこか演奏のできる所をさがしていた時に,ベーシストのバイト先のディスクユニオンつながりでトロンボーンの古池君が,グッドマンに出演するってんで,セッションに加わったりしてました.
 その後,ベーシストは田舎に帰ってしまい,一人になって,しばらくは職場の人たちとフツーのバンドをやってました.ブルースみたいなロックみたいなコミックバンドみたいな.
 んで,そのバンドも解散して,どうしようかと思っていたら,古池君のライヴの日にグッドマンに行って,三国さん(g)と市村さん(ts, g)に声をかけられて,……二人とも,実はその何年か前,梅島「ユーコトピア」のフリーセッションで一緒に演奏したことがあり,私のことを覚えててくれたんですね.それから,市村さんと坂上さん(bs)のサックス兄弟に加わったりして,グッドマンで演奏するようになりました.

その頃は,グッドマン以外には,どんな所へ,ききに行ったりしてたの?
 ベースの相方がいた頃は,新宿ピットインとかに,よく行ってました.渋さ知ラズ関係,とか,フェダイン,渋谷毅オーケストラとか…….
 当時,一番思い出に残ってるセッションとしては,’96年頃ですか,エヴァンパーカーとペーターブロッツマンの追っかけをやりまして,新宿ナルシス,世田谷美術館,深谷エッグファーム,ユニオンお茶の水店,関内エアジン etc, etc, 10日間にパーカーとブロッツマンを8回も観に行ってしまいました.深谷エッグファームの時は,二人のデュオのセッションでして,大変素晴らしい内容でした.ブロッツマンは,生で聞くと,すごいもんで,一音ブロオしただけで,最前列の人達はみんな,のけぞってました.アッハッハッ.知ってる我々は,後ろの方で聞いてましたからね.……関内エアジンに行った時は,楽器をかかえていって,ケースにサインしてもらいました.英語なんて,しゃべれないくせにエヴァンパーカーに「サイン,プリーズ!」って言ったら,快くサインしてくれて,私のケースの中を見て,「ラーセン?」って,きいたんです.彼は,ラーセンのマウスピースを使っているそうで,その時,自分のマウスピースはヤナギサワだったんですが,形が似てたらしんです.その後,自分もラーセンを使うようになりました.ラーセンのマウスピースは,うーん,何というか,すごくていねいな音が,出ます.つーか,乱暴なことを,させてくんない……でも,さんざんやってますけど,クックックッ.……エヴァンパーカーの繊細なサウンドを思うと彼が好んで使うのは,よく理解できます.

サックス兄弟とか,今やってる EMYU さんとのデュオなど,管楽器どうしのセットがグッドマンでは多いですが,どんなことを心がけてますか?
 特に心がけていることは,ないです.それより以前に,共演者が,どんなアプローチをしてくるのか,自分は,それに,どう反応するかとか,その場で,どんな音空間を創りあげるか,に重きを置いて演奏をしてます.……うーん,でも,EMYU さんとのデュオ(WINDSYNC)はちょっと違うかな……笛中心のデュオとしてやってますし……笛の音ってのは,何か人心をひきつける,そういう力があるんですよね.まして笛どうしのデュオともなると,お互いがお互いをひきつけ合うというか,“笛が呼びあってる”そんな感じがします.
 お囃しで笛を吹く時,心がけてるのは,常に高らかに遠くまでひびくような力のある音で吹くことです.山車に乗ってやったりする時とか,屋外でやるのが多いんで,とくにそういう時は,はるか遠くまで高くひびく音で吹きこんでます.お囃子の用語で,笛は別名「とんび」っていうんです.昔の人は,よくいったもんだなぁと思います.

では,グッドマン以外での活動を宣伝を兼ねて,教えて下さい.
 グッドマンで市村,望月,EMYU トリオをやっている望月芳哲(eb)バンドに参加,高円寺20000Vで毎月,演奏しています.2月は26日です.メンバーは,沫山(g),大沼,ヒコ(ds) 北(tp) 鈴木(ts) 小野(fl, ts)です.1月のセッションには,沖至さん(tp)に参加していただき,大先輩にムネを借りて大変素晴らしい体験を,させてもらいました.沖さんいわく「昔,新宿でやった『インスピレーション&パワーズ』を思いだしたよぉ」とのこと.エヘヘヘヘ.
 そして,もうひとつ沫山君も参加している「バトルコサック」という,ノイズ,ハードコア,パンク,ハードロック融合のジャンル分類不能,いや,するのめんどくさいってゆーバンドに加わってます.そんな説明じゃわかんねーよ,という方,だったらライヴ来いやぁ!いや,来て下さい.3月21日西荻ワッツでやります.

最後に,前回インタビューのモリシゲさんからの質問で「人生と即興は,とっても近いものだと自分は思うのですがもし,即興演奏においてでも,生活の中ででも,何かのトラブルがおこった時に,広い意味で,その現実を楽しめますか?
 楽しんでくしかないんでしょうかねぇ.即興においてはトラブルとか,アクシデントを実は期待してたりして.……予定調和で何事もおこらないのもつまんないし.とにかく,起こった状況に,どのように対処し,どのように反応し,どのようにアプローチするか,即興人としてのテーマだと思います.おかれた状況と,どう斗うか……実生活だって同じです.

グッドマンインタビュー
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